ゲイマン先生の2015年のインタビュー【…

Q
あなたは『グッド・オーメンズ(以下GO)』を前世紀に書いたわけですが、2015年の今再びこの作品が蘇り、掘り下げられるのはどんな感じですか?
A
とても妙な気分だ。GOを振り返って見てみると、未だに新鮮で、愉快で、滑稽で、馬鹿げていて、不思議に思える。その一方でどうしようもなく当時を反映している物もあって ― 誰1人携帯を持っていない世界だった― 原作に入れたジョークを読むと「これって今は通用するかな?」となるのもある。車内のカセットテープに関するジョークだってあるんだ。
Q
この作品はご友人のファンタジー作家である故テリー・プラチェットとの共著ですが、きっかけは何だったのでしょうか?
A
僕が『ドント・パニック:銀河ヒッチハイカーズガイド手引書』という本を書いたのがきっかけだった。ダグラス・アダムズのアーカイブを漁ったり本人にインタビューしたり、それはとんでもなく楽しい作業で、本を書き終える頃には「なんて愉快な作風なんだろう」と思うようになった。ダグラスが「典型的なイギリス流ユーモア」と呼ぶもの ― P・G・ウッドハウスや、ダグラスや、その他あらゆる…アラン・カーとか、こういった人々は全部そういうものがある。それから僕は机に向かい、ある小説の冒頭を書いた。その出来栄えにとても満足がいったから、友人数人に送って読んでもらったんだ。その中の1人がテリー・プラチェットだった。それから10ヶ月ほど経って、テリーから電話がかかってきた。彼は「やあ、私だ」 ― テリーは電話口で必ずこう話し始めたから ― 「やあ、私だ。えっと、君が書いたやつ、私に送ってくれたやつなんだけど、あれをどうかする予定は?」と言った。僕が「いや、今すごく忙しくて」と言うと、彼は「さて、この次に起こることが私には分かる。だから私にこの作品を売るか、私と一緒に書くのはどうだい」と言った。僕にしてみれば、ミケランジェロから電話がかかってきて「一緒に天井画を描かないか?」と言われたも同然なんだよ。ノーなんて言えるわけがない!僕はそれまで小説を執筆したことはなかったし、相手は世界最高の職人のひとりと僕が崇める人で、その人が一緒に小説を書かないかと提案してくれている。だから僕は、「わかった、一緒にやろう」という感じだった。
Q
アルマゲドンを食い止めようとするクロウリーのサウンドトラックにクイーンを選んだのはなぜですか?
A
あれは僕とテリーの内輪なジョークだったものが、どういうわけか本に紛れ込んだんだ。確か入れたのは僕じゃなかったかな。元々は本のためのジョークですらなかった。単にテリーと僕の二人が気付いたことなんだけど ― これはどの車にもカセットが置いてあった時代の話だ ― みんなクイーンの『グレイテスト・ヒッツ』のカセットを持っているみたいだった。でも話を聞くと、誰ひとり買った記憶がないんだよ!本当のところは、ガソリンスタンドに立ち寄ったけど、車内でかける音楽が何もないからその時店にあったクイーンの『グレイテスト・ヒッツ』を買ったんだと思うけどね。それが実際に起こったことなんだろうけど、なんだかカセットが勝手にクイーンのベストにすり変えられてるような気がして…ひょっとしたら変化したのかもしれない。そして思ったんだ、「うわ、もしこれが本当なら面白いことができる」って。そしてそのジョークを放り込んだところ、ぐっと愉快になった。まずフレディ・マーキュリーの曲が全て地獄からの指令に変わってしまうというのが面白そうだった。すると確かテリー・プラチェットが、クロウリーの車では必ずしも完全な変化を遂げるわけではないというアイディアを気に入ったんだ。つまり、クラシック曲をかけた時すべてクイーンのヒット曲になるものの、変化が完全じゃない。ヴォーン・ウィリアムズ流の『ファット・ボトムド・ガールズ』や、ベンジャミン・ブリテン流の『ボヘミアン・ラプソディー』が流れることになる。それともう一つ、それはそれはひどいジョークを僕がどうしても入れたくて…『キラー・クイーン』を聴いているクロウリーが、「モーイーとシャンドン」って一体誰のことなんだろうとぼんやり考えるというものだ。(※曲中の「モエ・エ(&)・シャンドン」のフランス語発音が悪いためにクロウリーが人名と勘違いしたというもの。)
Q
クイーンはとりわけ悪魔的だと思いますか?
A
クイーンで大好きなことの一つが、徹底して日常的であることなんだと思う。GOを書くにあたって素晴らしかったのが、あらゆることを「日常」基準にしようとしたことだ。カセットでクイーンの曲が流れたり、霧吹きといった代物を手にしているような世界に住む悪魔は愉快になる…それにほら、クロウリーはソフトウェアを工面するとパソコンと同梱されてくる契約書を取り入れるようなやつだ。彼はそれを魂の契約書を作成する地獄の人々に送って、「こいつらを見習いな」って小さなメモ書きを添えるんだから。
Q
クロウリーは「堕ちるというよりは緩やかに下降し続けている天使」と表現されています。つまり典型的な悪魔ではないということでしょうか?
A
そう。彼はつい、悪い連中とつるんでしまったんだろうな。でも自分がもはや天使ではないらしいという現実を、最大限利用しようと決意していることは確かだ。とはいえ、天国は彼にとって少し退屈だったと思う。彼は地上に留まる羽目になったわけだけど、今ではそれを随分と楽しんでいる。明らかに楽しめなかったのが…まあ、楽しめなかった事の一つとして彼は14世紀が嫌いだった。配管が発明されてからというもの、世界ははるかに良くなったと彼は考えている。それにこじゃれたレストランといったものが好きだし!行く場所もある。彼と同じ立場にあるアジラフェール ― 天使で古書のディーラーだ ―もすごくすごく地上が好きだしね。
Q
あなたの初期案のクロウリーにテリー・プラチェットが手を加え、ニール・ゲイマンに似せたというのは本当ですか?
A
恥ずかしくなるほどね。僕のクロウリーは当初、今よりはるかにおどおどしていて内気だった。そしてテリーが手を加えたクロウリーは…僕は昔、とりわけ20代の頃、自分はちっぽけだと思い込んでいて、存在感を出したかったもののどうすればいいかよく分からずにいた。なので手っ取り早い方法として、単純にサングラスを買ったんだ。
Q
今でもサングラスはかけてるんですか?
A
かけてない。物にぶつかるようになってから止めたよ。でも20代の僕は果敢に勇ましく、屋内であれ夜であれ、サングラスをかけていた。テリーはそれをたいそう笑えると思ったんだな。そこで彼は嬉々として僕の服装や、ひょっとしたらどことなく緩かった話し方 ― 今もだけど ― を、クロウリーに注いだ。そしてそう、テリーがクロウリーを仕上げる頃にはおどおどした内気さはぐっと影をひそめ、代わりに必死でクールになろうとしている、宇宙は自分に味方していると心のどこかで確信している人物になったんだ。