ドラマ版グッドオーメンズS2について
はるか昔のこと(気になる人のために付け加えると、あれは1989年のハロウィーン、つまり「グッド・オーメンズ」が出版される1年前)、シアトルで開催されたワールド・ファンタジー・コンベンションに参加したテリー・プラチェットと僕は、経費節約のために一緒の部屋に泊まっていた。僕たちは若い作家で、アメリカやコンベンションに行くにはお金がかかるからだ。あれは素晴らしいコンベンションだった。シアトルの巨大な古本屋では、緑色の装丁の、ジェイムズ・ブランチ・キャベル作品集のStorisende版を10冊以上見つけたのを覚えている。本の一冊一冊に書かれた作者のサインがあまりに丁寧だったため、本屋の店員たちはサインが印刷されたものだと僕に請け合い、だから1冊10ドルは適正価格だと言ったのだった。
僕には本を買う余裕があった。その頃「グッド・オーメンズ」がイギリスの出版社に、続いてアメリカの出版社に売れたばかりで、それはテリーや僕がこれまでどの対価として受け取った金額よりも多かった。(この件に関してテリーは信じられないほど心配していた。高額な前渡金を受け取ることは、すなわち自分のキャリアの終わりを意味するのだと信じていた。キャリアが終わらないことが判明すると、テリーは自分のエージェントに、今後は全ての本でそういった前渡金を受け取るべきかもしれないと相談した。彼の人生は一変し、節約するためとホテルを相部屋にしなくてもよくなった。閑話休題。)「グッド・オーメンズ」の新刊見本はまだ世に出ていなかったが、何人かの編集者は既に読み終えており(出版権に入札したものの落札できなかった人々だ)、皆とても興奮し、ワクワクしているようだった。
土曜の夕方、テリーはかなり早めにバーを去り、寝床に就いた。僕はそのまま人々と語らい素敵な時間を過ごし、ホテルのバーが閉まって客が全員立ち去る明け方まで居続け、それからホテルの部屋に戻った。
僕はできるだけそっとドアを開け、暗闇の中を忍び足で歩き、自分のベッドに向かった。
そうやってベッドに辿り着くやいなや、部屋の向こうから声がした。「いったい夜中の何時だと思っとる?母さんもワシも、お前のことをどれだけ心配したことか」
テリーはしっかりと起きていた。時差ボケにやられてしまったのだ。
そして僕も目が冴えていた。だから他にやることも無かった僕たちは、それぞれベッドに横になったまま、「グッド・オーメンズ」の続編の構想を練った。出来も良かった。次に3~4ヶ月まとまって時間を取れる機会が取れ次第、僕たちはそれに取り掛かる気満々だった。けれど僕はアメリカで暮らすようになり、テリーはイギリスに残って、「グッド・オーメンズ」が出版された後にサンドマンが「サンドマン」となり、ディスクワールドが「ディスクワールド」となって、とうとうちゃんとした時間を取ることはできなかった。
でも僕たちは一度として忘れたことはなかった。
「グッド・オーメンズ」が出版されてから31年の月日が過ぎた。それはつまり、テリー・プラチェットと僕がワールド・ファンタジー・コンベンションの開催されたシアトルのホテルでお互いのベッドに横になりながら続編の構想を練って以来、32年が過ぎたことになる。(「グッド・オーメンズ」のテレビドラマ版では、その構想の一部を使うことができた ― 僕たちの天使たちは、そこから来た。)
[写真…テリーと僕が「グッド・オーメンズ」がテレビドラマシリーズになるべきだと決意した、2010年のカーディフにて。]
テリーは「グッド・オーメンズ」をテレビドラマ化したいと明言していた。物語が語られることを望み、もしそれが上手くいけば、残りの物語も語られることを願っていた。
だから僕は、2017年9月に、セント・ジェームズ・パークで監督のダグラス・マッキノンの隣に、「グッド・オーメンズ」の製作現場責任者として自分の名前が書かれた椅子に座った。そしてその椅子は僕の下でゆっくり優雅に身を沈めた挙句バラバラになり、これはあまり良い兆し(good omen)ではないなと僕は思った。幸いにして、ダグラスのリーダーシップのもと、崩壊したのは椅子だけだった。
[写真…崩壊した椅子。]
というわけで、ひとたび「グッド・オーメンズ」のドラマシリーズがAmazonとBBCで放送され、世界中の絶賛、数多の受賞と喜びを浴びると、ロブ・ウィルキンス(この地上におけるテリーの代理人だ)と僕は、BBCやAmazonと続編の製作について話し合うこととなった。彼らは大興奮だった。僕たちは、マイケル・シーンとデイヴィッド・テナントに、続編を作ることについて話した。彼らも大興奮だった。僕たちはどんな内容になるかを少しだけ彼らに教えた。彼らの興奮度はさらに高まった。
[写真…撮影2日目の、ロブ・ウィルキンスとデイヴィッド・テナント。]
[写真…僕とマイケルと、もうすぐ2歳になるアッシュ。]
[写真…「グッド・オーメンズ」撮影の大半はこんな感じ。すぐそこで何かしらが起こってる間、ひたすら画面を覗き込んでいる。]
僕は何年も前からジョン・フィネモアのファンで、「With Great Pleasure」というラジオ番組で彼と一緒に仕事する喜びを体験した。この番組では僕が好きな一節を選び、素晴らしい読み手たちにそれを朗読してもらい、その一節について語り合った。
(これは同番組で、テリー・プラチェットと一緒に仕事をすることについて僕が語ったくだり。テリーの書いた詩も朗読している:https://www.bbc.co.uk/sounds/play/p06x3syv. こっちではジョン・フィネモアのくだりも含めて番組全体が見られる:https://www.youtube.com/watch?v=j7OsS_JWbzQ.)
[写真…右から左へ、「With Great Pleasure」の面々。ジョン・フィネモア、髭だらけの僕、ニーナ・ソサニヤ(「グッド・オーメンズ」でシスター・メアリーを演じた)、ピーター・カパルディ(最初のBBC版「ネバウェア」でイズリントンを演じた)。]
僕はジョンに、「グッド・オーメンズ」の次回作の脚本を僕と一緒に書いてくれないかと尋ね、彼が承諾してくれた時は嬉しくてたまらなかった。サプライズで他の共同制作者もいる。そして僕と一緒に全体を監督するためにダグラス・マッキノンが戻ってきてくれる。
というわけで、これが計画だ。僕たちは長い間秘密にしてきた(その理由の大半は、そうしないと僕のメールの受信箱やツイッターの通知がとうの昔に「続編について何か教えてくれない?」で溢れ返っていたと推測されるからだ)けど、もうスコットランドでセットの製作段階に入った(今回のロケ地はそこだ。近々、スコットランドでの撮影事についてもっと教えるよ)し、これ以上秘密にしておくのは不可能だ。
僕たちの大好きな天使と悪魔について、あれから何が起こったのか(それと、あれより前には何があったのか)、あまりに多くの質問を受けてきた。ひょっとしたら、これから書く内容に、君が待ち望んでいた答えの一部があるかもしれない。
「グッド・オーメンズ」の続編の舞台は、再びソーホーに戻ってくる。そしてあらゆる時空を超えて、ある謎を解明していく。その皮切りとなるのが、ソーホーの露天市を彷徨うひとりの天使。アジラフェルの本屋へと向かうその天使は、自分の正体に関する記憶が無かった。
(ただし実際の物語は、誰かが「光あれ」と口にできる5分くらい前に始まるけどね。)
